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2014年07月07日(月) 
第十一話「小さいからこそできることがある」

もう一方のグループでは、自称・地味な主婦の山田直美(43)が、高校3年生の中村優希(17)とマラソンが趣味で持久力が自慢の大学生・前田真生(18)という若いイケメンに囲まれ上機嫌で語っていた。中村が通っている高校では1年生が必須、2・3年生は選択で、情報科の授業として社会人基礎力養成のために「地域活性化」をテーマとしたプロジェクトに取り組んでいる。その中で中村は、市民数千人を動員する恒例イベントの総括を任される逸材だ。商店街活性化から地域連携創造まで、その守備範囲は広く思考は柔軟だ。

「おばちゃんがよく外食に使うサイトに、グルーポンとかポンパレとかいうのがあるんだけど知ってる?」。ふたりとも利用はしていないが名前だけは知っていた。これらのサイトは「共同購入クーポンサイト」と呼ばれ、店舗側は「料金」「販売期間」「最少販売数」「最大販売数」を決めて商品を出品、利用者はサイトを通じてクーポンを申し込み、最少販売数を超えた段階でクーポンが成立して代金がクレジットカードから引き落とされるという仕組み。最大販売数を超えることはないので売りすぎの心配もなく、利用方法に条件がつけられるので来客のコントロールも可能だ。ランパスと同様に掲載料は無料で、クーポンが利用された分だけ運営会社にシステム利用料(引き落とし手数料を含む)を支払うが、これも利用料と相殺されて店舗側に振り込まれるので事務負担も小さい。

「仕組みはよくわからないんだけど、わりと高級なレストランや料亭とかの食事が半額くらいなるの。大都市圏内がほとんどなので、浪速のチベットから山下りて電車で行くには交通費もかかって割安感もほどほどだけど、都会の人たちにはオトクなのよね~。北新地の鉄板焼きなんて、鹿児島黒牛のお肉が口にいれた瞬間にとけちゃうのよ。噛むのがもったいないくらい美味しいお店だったので、三回もいっちゃった、全部半額クーポンで♪」と直美はふたりにポンパレの魅力を力説した。「利用者には半額ってとても嬉しいでしょうが、お店はどうやって利益をあげているんですか?」と前田がぽつりとつぶやいた。

飲食店の原価率は3~4割と言われているので、もろもろの経費を計算すると半額で利益を出すのは至難の業だ。前田の疑問は当然だが、この質問は食欲だけで仕組みに興味のない地味な主婦の直美には大変難易度の高い質問だった。代わって中村が「ぼくの街の飲食店では『バル』というイベントを毎年2回開催しています。前売りで1冊5枚綴りのチケットを3,500円で購入して、その日に140くらいある参加店を自由にハシゴできるんです(残ったチケットは「あとバル」という期間に利用できる)。事務経費を差し引いてチケット1枚のお店の売り上げが600円のところ、どちらのお店も500円以上の原価をかけて料理一品とワンドリンクを出しています」とフォローした。前田が「それでは儲からないよね」と続けると「損して得取れという商いの諺があるように、どちらのお店もバルはお祭りだからみんなに楽しんでもらって、よかったと感じてくれた人が普段に戻ってきてくれるといってます」と中村が応えた。

「グルーポンやポンパレでも、お客さんがリピートしてくれたり、クチコミの発信源になって普段の売り上げにつながることを期待しているんでしょうけど、きっと真っ赤っかでしんどい思いをしていると思うのよ。それに明らかに品質を落としていたりサービスが悪かったりするお店も少なくないの。北新地の鉄板焼きみたいなホームランもたまにあるけど、凡打は多いし三振も少ないない。全体の質はあまり高くないと思う。これも利益が出しにくいからなんでしょうね」と直美が利用者の実感を語った。数千円の少額の場合、運営会社は4割近いシステム利用料を徴収する。クーポンの取り引きにおいて、店舗側の負担が非常に大きいという直美の懸念はそのまま現実だった。

「別に半額じゃなくてもいいんでしょう。それに地方の店舗が参加していないというのは狙い目じゃないかな。地元のお店が現在のクーポンよりちょっとだけお得なサービスを提供する仕組みが出来たら、利用者としてもとても嬉しいんじゃないですか」。中村の提案は、都会型モデルの共同購入クーポンを地域型で運用してみてはどうかというアイデアだった。彼の明快な発言に本当に高校生なのかとみなが驚いた。「地域SNSのような信頼できるネットワークがあれば、そのメンバーが良質な店舗のみを紹介し、クーポンをお店の課題を解決するために発行する。営業の必要がないので経費も抑えられ、クオリティの高い身近なお店だけを集めたサイトになり、お店の要望をきちんと反映させてある程度利益が出せるビジネスモデルができますね」と前田がグループのアイデアをまとめた。

つづく

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数1,417 カテゴリ日記 投稿日時2014/07/07 08:31
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和崎宏さん
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情報化による地域の再活性化をライフワークとしています。
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