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2011年09月08日(木) 
インフォミーム株式会社代表取締役
関西学院大学総合政策学部非常勤講師
和崎 宏

東日本大震災における情報通信の現状
岩手県釜石市では、東日本大震災で1200人を超す死者と行方不明者を出しましたが、その中で3千人近い小中学生のほとんどが無事に避難しました。多くの子ども達の命を守ったのは、巨大な防波堤でも最新の科学技術でもない、「津波てんでんこ(自分の責任で早く高台に逃げろ)」という古くからの言い伝えでした。ある中学校では、生徒たちが教師の指示を待たずに、隣接した小学校の児童の手を引いて高台に走ったことが、全員を無事避難させる最大の要因となりました。
被災して数週間、現代社会を支えてきた情報通信基盤はほとんど無力に近い状態でした。光ファイバー網は切断、基地局は破壊、長期間の停電や輻輳が通信ネットワークを混乱させて利用できませんでした。これに対して、分散・協調ネットワークの特性を活かしたインターネット網の回復は早く、一部避難所では、ツイッターやSNSなどのソーシャルメディアを活用して悲惨な様子を外部に伝達することで、全国各地から多くの支援を受けることができました。普段からインターネットで交流のある人たちが、安否確認や物資の確保を行ったことは言うまでもありません。

被災地支援にみる支え合いによるソーシャルメディアの活用
行政レベルでソーシャルメデイアが活躍した事例のひとつが、兵庫県多可町による宮城県村田町への支援です。多可町の戸田善規町長と村田町の佐藤英雄町長はもともとフェイスブックを使って交友があり、佐藤町長が発災1時間後から当日唯一の情報発信手段であったインターネットで断続的に情報発信を行ったところ、戸田町長が22時頃にフェイスブックにコメントをつけ、翌12日には毛布と非常食を手配、13日に物資を乗せたトラックが兵庫を出発するという素早い対応が実現しました。その後も両町の支援のつながりは継続・深化しています。
民間では、地域SNSが連携して被災地を支援した「村つぎリレープロジェクト」があります。これは、普段から交流のある全国各地の20サイトが、それぞれの地域で呼び掛けた支援物資を積み増しながら、リレーのようにして被災地に届ける仕組みです。経済的に貧しく交通手段も発達していなかった明治以前、村々が責任を持って病人などを移送する「村継ぎ送り」があり、それに倣った取り組みです。4月6日の尾道(広島)を出発した学用品が、姫路(兵庫)・春日井 (愛知)・掛川(静岡)・葛飾(東京)とリレーされ、3日後に盛岡(岩手)に到着し三陸沿岸沿いの被災地の子ども達に配られました。
東アジア系の人たちは知り合い同士が助け合うという特性があるといいます。災害時におけるソーシャルメディアの活用事例が示すように、科学技術だけに頼り切るのではなく、おざなりにされがちな古くからの伝承や他者の交流を大切にして、普段からお互いに支え合える関係づくりをしておくことが肝要であり、その関係をもとに情報通信技術を活用することが適切であるのでしょう。

和崎宏(わさきひろし)
1957年福岡県生まれ。兵庫県姫路市においてインターネット接続事業を経営する傍ら大学でネットワーク論を指導。地域SNSによるまちづくり活動を行い、日経地域情報化大賞2008グランプリ、地域づくり総務大臣表彰などを受賞。著書に「地域SNS最前線-まちづくり実践ガイド(アスキー)」など。兵庫県立大学大学院環境人間学研究科博士後期課程修了。博士(環境人間学)。

兵庫県の人権啓発冊子「ひょうご人権ジャーナル きずな」(毎月1回 県内30,000部発行 無料配布)平成23年11月号発行予定の第一稿。

閲覧数1,088 カテゴリ日記 コメント1 投稿日時2011/09/08 12:02
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